Jul 6, 2010

国境

生まれてから一度も国境をみたことがない。
見たことがあるのは、地図の上で赤く線を引かれている国境だけだった。

旅行するとき、なるべく陸路海路を使おうとおもった。それは、その国と国のあいだをみたかった。そこには何があるのか。国と国の狭間には何があるのだろうか。日本では見ることができない国境のラインを見てみたかった。

初めて国境と接したのは、中国とラオスの国境だった。

朝もやの中、国境に街モウハンにたどり着く。急に標高が落ちたため、高い湿度と気温ですぐに汗ばむ。モウハンは人気のない新しいビルが立ち並び、いままで見てきた中国とはまったく違う雰囲気をもっていた。しばらく中央道りを歩くと、踏切みたいなもののがありその周りに軍服の中国兵がたくさん屯している。当然陸路での国境超は初めてだから、どこにイミグレーションがあるのかわからない。近くまで行ってみると、近くにへんてこな小屋がある。本当に公衆便所くらいの小屋だ。なんとそこがイミグレーションで、そこでスタンプを待つ人がたくさん待っていたのだ。イメージだと、もっと大きなコンクリートの建物で、厳しい雰囲気が漂っていると思ったのだが、ただのほったて小屋だった。小屋の周りを鉄条網ではっているわけでもなく、ただそこに道があり、小屋があるといった感じだ。

そして、そこでスタンプをもらうと、そこからは中国でもなくラオスでもない無干渉地帯になる。それがラオスまで二キロほど続くのだ。バイクタクシーの運ちゃんに乗ってけと言われたが、断った。

自分の足で国境をわたりたいと思い、そこからどれくらいあるかわからない道路を歩き始めた。無干渉地帯なのに、そこには人が住んでいて、畑をたがやしていたりした。さらにしばらくあるくと、周りは森だけになる。

すると目の前に看板がある。どうやらそこが国境らしい。

生まれて初めて目にする国境は、本当になにもなかった。
赤い線や厳しい警備もない、ただの小高い丘の上に、看板がたっているだけだった。

本当はなんにもなかった場所。そこに線がひかれている。

国境にまたがって、国って概念や国境っというものについて考えてみる。
どこかの国と接してない国はない。そしてそこには必ず境がある。

しかし自分が見た境は、ただの丘だった。なにも遮るものもないし、境をつくっているものはない。歩いて自由に行き来ができる。


本当にどこにでもあるような光景だった。